« ある体験レポートとの遭遇 | トップページ | WBC その1 »

2006/03/11

医療的ケアという“難問”

■東大和市が争う姿勢 鈴花ちゃん入園拒否訴訟

 のどの障害に対応できないことを理由に入園を拒否したのは不当として、東京都東大和市の青木鈴花ちゃん(5つ)と両親が、同市に認可保育園への入園承諾と300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、東京地裁(鈴木正紀裁判長)で開かれ、市側は争う姿勢を示した。
 東京地裁が1月25日、鈴花ちゃん側の主張を認め、入園を仮に義務付ける決定をしたことを受け、鈴花ちゃんは2月から登園しているが、両親は正式な入園承諾と賠償を求めている。
 訴状によると、鈴花ちゃんは気管の病気のため、のどに気管チューブを装着し、定期的にたんを吸引する必要がある。認可保育園への入園を希望したが、市は吸引が医療的行為に該当し、対応できないとして昨年、2回にわたり入園を断った。
(共同通信) - 3月10日12時45分更新


■ここに注目:鈴花ちゃんの保育園入園問題 家族「自立支援を」 /東京

 ◇東大和市、法廷での争いに
 たんの吸引が必要であることを理由に保育園への入園を断られたのは違法として、東大和市の青木鈴花ちゃん(5)と両親が、同市に300万円の損害賠償と入園を認めるよう求めた訴訟は10日、東京地裁で第1回口頭弁論が開かれる。鈴花ちゃんは同地裁の決定で既に仮入園をしているが、市側は訴訟を継続し法廷での争いに突入する。訴訟に至った経過をたどりながら、医療的なケアが必要な子どもたちを取り巻く課題を追った。【木村健二】

 ■市側は「想定外」
 鈴花ちゃんは気管の組織が未発達で呼吸がしにくくなる「喉頭軟化症(こうとうなんかしょう)」を患った。気管切開手術を受け、空気を気管に通す器具「カニューレ」をのどに装着。だ液やたんが気管内にたまるため、1~3時間に1回ほどの間隔で取り除かなければならない。03年6月からは障害児向けの東大和市立の施設へ通い始めた。
 日常生活はたんの吸引以外の面では支障がなく「保育園に通える力を十分持っている」という療育関係者ら周囲の勧めもあり、父繁宜さん(40)らは04年度、05年度に保育園入園を申し込んだ。しかし、市側はいずれも拒んできた。
 たんの吸引は、原則として医師や看護師に限られる「医行為」だ。同市児童福祉課は、鈴花ちゃんの受け入れには医療的な措置が常時必要で、看護師の配置などの職員態勢を想定していないとの点を拒否の理由に挙げる。看護師を置く保育園もあるものの、0歳児保育への対応が主な目的だという。

 ■仮入園で元気に
 繁宜さんらは昨年11月、市を相手取り提訴。合わせて「仮の義務付け」も申し立てており、東京地裁は今年1月25日付で「重大事故に発展する可能性は極めて乏しい」などとして仮入園を認めるよう市側に命じた。
 鈴花ちゃんが市立向原保育園へ仮入園したのは2月10日。これに伴い、市は鈴花ちゃんが通っていた施設から看護師1人を急きょ応援に回した。さらにサポート要員として市職員の看護師・保健師8人が、たんの吸引などができるよう医師の指示と研修を受けた。
 母待詠子(たえこ)さん(37)によると、鈴花ちゃんは仮入園から1カ月近くがたち、アニメの主題歌で踊るなど元気に過ごしているという。待詠子さんは「今までかなわなかったことが実現でき、一日一日を元気に通わせてもらっていることに日々感謝しています」と言い、「行政は建設的に考え、個人の自立をサポートしてほしい」と訴える。だが、市側は基本的な主張を変えておらず、入園をめぐる訴訟が本格的に始まる。

 ■財政支援策も
 鈴花ちゃんは公立小学校への入学も希望している。同市教育委員会は「現時点で具体的な対応は行っていない」とし、受け入れの是非は白紙の状態だ。
 他の自治体の対応はどうか。大阪府は06年度予算案で、たんの吸引など医療的なケアが必要な児童生徒のために小中学校に看護師を配置する市町村への補助金として3735万円を新たに盛り込んだ。市町村ごとにばらつきの目立つ対応をまとめ、付き添いの保護者らの負担を軽くするのが狙いだ。
 「医療的ケア全国ネットワーク」(東大和市)を主宰する下川和洋さん(41)は「国には自治体が取り組みを行う上での財政的な支援を求めたい」と指摘。04年5月に国会で鈴花ちゃんの問題を取り上げた高木美智代衆院議員も「障害は個性であり、当事者と家族の意見を十分に尊重した上で必要な措置・支援がなされるべきだ」と言う。また、下川さんは市区町村の行政についても「住民のニーズに応える取り組みを進めてほしい」と話している。
3月9日朝刊(毎日新聞) - 3月9日11時1分更新


■医療的ケアは「日常の延長」?

つめ切りや外用薬の塗布、血圧測定などの医療的ケア。ホームヘルパーなどの介護職が、利用者や家族に頼まれて行うことが多い。
 一般的なヘルパー研修ではほとんど学ばないが、介護現場では「日常生活の延長」と気軽にとらえがちだ。
 こうした状況に警鐘を鳴らす研究結果が、先月の日本介護福祉学会で報告された。介護事故などを研究している八戸大学の篠崎良勝講師らによるものだ。

 個人の経験のみに頼って、適切なケアが提供できるのか――。そんな疑問から、篠崎講師らは昨年10~12月、介護職51人を対象に医療的ケアの研修を実施。医療的ケアに対する意識が研修の前後でどう変わるかを調べたところ、「ヘルパーの業務にできる」と考える人の割合が、研修後に減ってしまったのだ。

 研修は1回2時間ずつ全8回。身体のメカニズムや薬の副作用などの講義と、実技指導を行った。実技は「つめ切り」「座薬」「浣腸(かんちょう)」「血圧測定」「外用薬の塗布」「検温」「点眼」「服薬管理」の8項目。このうち、研修後に「業務にできる」と答える人が増えたのは点眼のみで、残り7項目では大幅に減った。「つめ切り」は研修前の82・4%が45・2%に、「血圧測定」は74・5%から27・8%に、「外用薬の塗布」は56・9%から32・4%になった。

 篠崎講師は「専門的な知識や手法を学ぶことで、これまで十分な知識や技術がないまま行ってきたことに気づき、業務として行うことに不安を抱くようになった結果」と指摘する。

 

医療的ケアに関して、従来の国の基準では、医師や看護師など医療職にしか認められない医療行為にあたるかどうか、不明確だった。だが、医療職の少ない介護現場では、「違法行為かも」と不安を抱えつつ、なし崩し的に介護職が担ってきた。
 現状を追認する形で、厚生労働省は今年7月、つめ切り、血圧測定など16種の行為について、医療行為に当たらないとする通知を出し、介護職に「解禁」した。
 ただ、通知ではこれらの行為に関する研修や訓練を「望ましい」とするだけで、義務づけてはいない。篠崎講師らの研究結果は、介護職の多くが十分な知識や技術を習得する機会がないことを示している。介護職も利用者も不安をぬぐえない。
 解禁しただけでは、医療的ケアを巡る現場の混乱は収まらない。研修の義務づけと、内容の明確化が必要ではないか。(林真奈美)
(2005年11月15日  読売新聞)

                   ◇                   ◇

痰の吸引などの医療的ケアに、安全に対応できる体制が整っていない自治体が入園を断ったこともわかるような気がします。

やはり命に関わってくることなので、安全性をおろそかにしたくはないというところではないでしょうか。

高齢者の世話をしている介護職の人ですら、医療的ケアの業務に不安を抱いているのに、保育士の人が小さな子どもを相手に、痰の吸引を自信もってするには、相当の研修が必要なのかな、とも思われます。

小さな子どもは、体の機能が成熟していないので、体調が変化しやすく、大人の医療と小児の医療は全く別物だということを聞いたことがあります。

それなら医師や看護師を公立の保育所に配置すればいいということになりますが、人を増員したりするには、それなりの費用も必要だと思います。

特に小児科の医師不足は、深刻な状況のようですし、看護師の増員も地域によっては難しいところが多いようで、どこかを増員すれば欠員がでたところに看護師を補充しなければならないでしょう。

これから鈴花ちゃんのような子どもがたくさん出てくることも考えられます。

裁判は、どちらかが「良い」「悪い」という白黒はっきりさせる結果は出てくるけれども、そればかりがクローズアップされて、必要とされている体制づくりの議論が疎かにならないかと心配になります。


<参考ブログ>
ブログで情報収集! BLOG HEADLINE
「青木鈴花ちゃんの入園、東大和市に義務づけ(東京地裁)」

|

« ある体験レポートとの遭遇 | トップページ | WBC その1 »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

新猛虎道さん、こんにちは!はじめまして。
オープン仕立ての僕のサイトに遊びに来て頂き、有難う
ございます。

僕も生まれてからこのかたずっと阪神ファンです。

ところでこの讀賣新聞記事の奈良県の話しは重要な
問題提起を提示していますよね。新猛虎道さんのコメントに
完全同意です。

問われているのはこのような比較的高度の医療行為を
潤滑に行えるシステムですよね。そこを切り離して考える
ことは出来ない。

そういった専門家をトレーニングする仕組みは全国
そうそうはないと思います。せめて熟練した介護ヘルパーと
連係した仕組みを作らないと---。

この件は双方にとって気の毒な感をぬぐえないですが、
熟練した看護士や介護ヘルパーなどの専門家と幼稚園が
連係した仕組みを構築する上ではチャンスなのかも
しれません。

少子化と高齢化の間で起こるアンバランスの縮図とも
いえるかも知れません。高齢者のほうにばかり専門家は
流れて、子供の方に流れが来ていないのが実態ですので---

時々遊びに来ます。今後とも宜しくお願いします。

対して、特殊なトレーニングを保母さんが対応できる

投稿: 甲子園しんちゃん | 2006/03/11 11:08


日本って、

ほんとに、先進国なのでしょうか??

と、思ってしまうことがあります・・・ -_-;

投稿: SP | 2006/03/11 11:24

>甲子園しんちゃんさん
ようこそ!
公式では、いろいろと書き込まれているのを拝見していました。
僕のブログは、特別なテーマもありませんし、羽目をはずしすぎていることもしょっちゅうです。
こんなブログですが、どうぞよろしくです!

投稿: 新猛虎道 | 2006/03/11 22:42

>SPさん

日本は先進国だと思いますが、ところどころに問題が山積みしているのかもしれません。
以前、箱庭さんのブログでコメントしたのですが、何でもかんでも白と黒で分けようとする風潮が広がっているように思います。
白と黒の間には、グレーの部分があり、その色の濃さもさまざまだということをたまたま知り合った記者から聞いたことがあります。

ある一面を捉えるだけでなく、そういうところにも目を向けなければ、全体を見極めることができないということをその記者は言いたかったのかもしれません。

投稿: 新猛虎道 | 2006/03/11 22:56

弱いものを見捨てない。弱者の為の政治

なーんて
そういう事をいいながら

拉致はないといい続けた党が
日本を本当に悪くしてしまいましたねー

キレイ事を言う政党はうそつきだった

地震発生時、人命よりも自衛隊は違憲的存在だからと出動命令を出さなかった

首相になる以前に人間としての絶対的な愚かさによって多数の人命が失われました。

謝罪の気持ちがないのが本当に不思議です

日教組による教育も国を滅ぼしかねません。

日本人が普通の感覚に戻るためには
あの党がやってきたことを断罪すべきですね。


そして新たに本当に弱者の為の政治をかかげる党をつくる

でも、結局同じかなー


投稿: バース党万歳 | 2006/03/13 02:05

社会の動きにアンテナを張りながら、柔軟な思考をしていく。

イデオロギーや利害に固執し過ぎて、本当にすべきことは何かということがわからないとしたら、それは遺憾だとか残念という言葉ではすまされないと思います。


僕は、医療関係者ではありませんが、厚生行政の無策ぶりと立ちの悪さにあきれて物がいえません。

投稿: 新猛虎道 | 2006/03/13 02:53

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 医療的ケアという“難問”:

« ある体験レポートとの遭遇 | トップページ | WBC その1 »