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2006/06/27

日本代表ジーコ監督 退任会見全文(3/3)

日本代表ジーコ監督 退任会見全文(3/3)
2006年06月26日


■適切な判断をしたと思っている

W杯では思ったような成績が残せなかったものの、強国相手にも自信を持って臨むことができるようになったと4年間の成果を語った W杯では思ったような成績が残せなかったものの、強国相手にも自信を持って臨むことができるようになったと4年間の成果を語った【 スポーツナビ 】

――ジーコ監督は「これからも良い関係を保っていきたい」とおっしゃっていましたが、日本サッカー協会としての考えは

川淵 今の段階で特に「こういう考え(です)」というアイデアは、持っていない。これから田嶋(幸三)技術委員長と相談しながら、考えていきたいと思う。

――W杯のオーストラリア戦で、小野選手の投入や大黒選手の投入について、そのさい配が適切だったのか。振り返ってどう思いますか

ジーコ 小野は1-0でリードしている段階で投入した。相手は自陣からロングボールを多用し、次々と大きな選手を送り込んできた。

「日本はなぜ大きな選手を入れて対応しなかったのか」とよく言われるのだが、中盤を省略した形で押し込まれているということは、相手の中盤から後ろにはかなりのスペースがあったということ。
小野をボランチに入れることで、中田英を前に押し上げた。中村はかなり疲れてはいたものの、1本の(決定的な)パスを出して試合の流れを変えることができるので残しておきたかった。

小野のパスを散らす能力で、前掛かりになったオーストラリアの裏へボールをつなげようと思った。(それまでも)追加点を奪うべくチャンスを作り出していたが、もっとチャンスを増やして追加点を奪うことを考えた。

大黒の投入に関しては、同点にされた後も数回のチャンスはあった。そこで、彼の良さを出してもらいたかった。
前線でためを作ってくれというような、(彼の特徴に合わない)要求をしたわけでない。今まで彼の得点でチームが救われたこともあったが、その形を期待した。

計算外だったのは、相手の攻撃を抑えていい活躍をしていた坪井が、筋肉の痙攣(けいれん)を訴えたことだ。
そこで茂庭を入れたが、彼と同じリズムで防ぐには難があった。

最終的にはバック(DF)を1人外して、FWを投入した。あれは異例なケースだったと思う。
自分のさい配に関しては、選手が指示した通りに動いてくれて勝った試合もあったし、そうでない試合もあった。サッカーにはまったく同じシチュエーションというものはない。

あのとき私は、「このさい配でチームが勝てるのではないか」と考えた。残念ながら、思ったようにはならなかったが、「判断が間違っていたのではないか」と言われても、今も自分としては間違っていなかった、適切な判断をしたと思っている。


――監督しては初めてのW杯でしたが、3試合を通じて「あの時、こうすれば良かった」と思っているシーンがあれば教えて下さい

ジーコ 反省は、まったくない。
サッカーの監督は、後から「ああすれば良かった」と言えるものではなく、そのさい配をする時点で瞬時に判断をしなくてはならない。

それが自分に任せられた全権であり、責任だと理解している。
自分がさい配をして結果が出なかった時も、私は選手の責任にしたことは一度もない。周りの人から何かを言われて、その通りにしたから負けた、ということも私は言ったことがない。

第3者が判断することなので「お前じゃダメだ」と言われれば、甘んじて受ける気持ちでやってきた。本当に大きな責任の中で選手たちとやってきたことに対して、反省するこということはまったく考えていない。

試合の前には必ずトレーニングがあり、テストをして選手を選んで、試合に臨む。
最終的に選ぶのも、トレーニングを組むのも自分。ほかの方の意見は十分に参考にはするが、最終的には自分が責任を持って決断しなければならない。

これについても4年間、全うしたつもりでいる。

今回のW杯出場に関しては、日本代表の監督としてピッチに立ち、感動しながら仕事をさせてもらった。
予選の時期から選手や関係者とともに、いろいろな難関を乗り越えてきた結果として得たものだ。

世界の32チームの1つとしてW杯に参加できた。私と同じような時期に(代表チームの監督として)始めた監督でも、途中で更迭などによって最後までチームの指揮を全うできなかった人もいる。
その人たちの思いを考えると、「自分は何て幸せなんだ」と思う。結果こそ出なかったが、1試合ごとに自分が持っている知識や選手への信頼をすべて託して、自信を持って戦った。だから、悔いはないし、恥じることもない。全身全霊で打ち込むことができた4年間だった。


■補強運動やベース作りを行ってきた

――言い訳でないとはいえ、結果が出なかった最大の原因はフィジカルの差であると言っているような印象を受けます。体格差に関してはあらかじめ分かっていたことだと思いますが、どのような対策を行ってきたのですか。また戦うすべはあったのですか

ジーコ 当然、それは分かっていたので、4年間を通してできる限りの補強運動を行い、強いチームに対しての(フィジカルの)ベース作りを行ってきたが、思うようにはいかなかった。

そこでW杯本大会が近づく中で、相手にリスタートをできるだけ与えない、不必要なファウルをしない、ロングボールを放り込まれたときでもなるべくコーナーキックにはしない、あるいはロングスローもあるので相手自陣に近いボールを(クリアで)蹴るようにということを繰り返してやってきた。

実際に、セットプレーで放り込まれる数が少ないほど、ジャンプの繰り返しは防ぐことができ、消耗を避けられる。
40本を放り込まれたとして、2点を奪われたとしても38本は防いでいることになる。40本を20本、10本と減らせればという計算をしながら、取り組んできた。

ただし、W杯中やその前のドイツ戦もそうだったが、自分たちがボールを持ったときには攻撃のきっかけを作ることはできるが、あの緊張感と責任の重さの中で、90分間すべてを防ぎ切ることはなかなかできない。

残り時間の少ない中で得点を奪われて、勝ち損ねる試合が続いた。ただ、あの時期に選手たちとできることは、それぐらいだったと思う。

オーストラリア戦では、頭が真っ白になる猛暑の中で、体を酷使しなければならなかった。

しかし、高いボールがすべてではなかったと思う。足元での突破が図れないと、中盤を省略して自陣から大きな長いボールを上げることになる。

そうなると、こちらが前掛かりになってボールを奪われたときに、相手は前に持って行けばいい。
そうすると、DFがクリアしたボールを中盤が拾いにいかなければならず、その繰り返しになると、ちょっとしたスペースが生まれてしまい、そこを相手の2列目などに突かれてしまう。そういうケースで点を取られたと思う。

クロアチア戦では、ロングボールを放り込んできたが、日本から得点を奪えなかった。非常に苦しい中で選手たちはしっかりやってくれたと思う。

体格の違いについてだが、相手にセットプレーを与えないだけで、日本は勝ち切れるだろうか。
相手はもっと巧妙なパワープレーを仕掛けてくるだろう。だから、体格の差を何とか克服するような努力が必要だと言いたかった。


■選手が資質を上げていくことが大事

――日本に残すことができたと思う点、ジーコさんご自身が監督業を続ける中で課題になると思った点を教えて下さい

ジーコ 今までは相手の名前を聞く、あるいは相手のユニホームを見た時点で劣等感を抱いてしまったようなチームに対しても、劣等感を持たない自信。
また戦術面は別として、各自が自分のやれることをしっかりとやれば勝てるんだという気持ちを選手に植え付けることができたと思う。

監督業を続けていく上でという意味では、すべて。
監督としてという意味だけでなく、人間として日々何かを学びたいと思っている。

学ぶことは永遠に尽きない。あくまで主役は選手であり、監督は自信を持ってピッチへ送り出す手助けしかできない。
その中で一番大事なのは、インフォメーションの豊富さ。

現在のサッカー界に起きている出来事、あるいは起こり得ること、自分が得たものから選手たちに的確な情報を与えられるということが、良い監督であるかそうでない監督であるかの1つの大きな分かれ目になる。サッカーの動向を見据えながら、その点を蓄えていきたいと思う。


――今大会、アジア勢が結果を残すことができなかったことは妥当だと考えていますか。それと、今回の日本代表のメンバーは前回に比べて平均年齢が高かったが、若手が少ないように思います。次の2010年を見据えて若い選手を育てるということに関しては、どのように考えていますか

ジーコ アジア勢が決勝トーナメントに進めなかったことは残念だが、ほかの(16強入りした)チームとは差があった。

これからアジアのチームが考えなければいけないことは、監督ありきでは強くなれないということ。

経験豊富で世界的に結果を残している監督が来たからといって、チームは強くならない。
選手のメンタルやフィジカル、テクニック、戦術の理解度といった面を含めて、選手が資質を上げていくことが大事。
フィジカル面では欧州との差が目立つが、そういった差が開かないように個々が努力しなければ(状況の打開は)難しいと思う。

今大会、決勝トーナメントに進出した名前のある監督でも、体格差で劣るチームを率いていたときにはいい成績を残すことができなかった例もある。
それでも欧州のチームを率いると勝ち始める。
監督のさい配以上に、選手の資質が問われる。

日本と韓国は非常にいいライバル関係を築き上げてきたが、それ以上に世界に目を向けてフィジカル的に優れたチームとやることで、自分たちの良さは何なのかと突き詰めながらやっていかなければ、将来的には難しいと思う。

若手の経験に関しては、次の監督の考え方、どういったサッカーを目指すのかに尽きる。
しかし私の意見としては、経験面よりも体格差の面で、これからアジアに入ってくるオーストラリアと、もともと日本より体格に優れていて国を挙げて力を注いでいる中国が日本にとって脅威になる。
日本も負けないように、チーム作りや選手選考をやるべきだとしか言えない。世代交代も進んでいくと思うが、次のW杯に向けては、オーストラリアへの対策が大変になると思う。



<了>

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